妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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早産児と低血糖

低血糖は低出生体重児や早産児において発症頻度が高い症状の一つです。
早産児や低出生体重児に低血糖を起こしやすいのは肝臓のグリコーゲン蓄積、脂肪組織が少ないことに加えて、糖新生能が弱く、カテコラミンやコルチゾールなどの血糖上昇作用のあるホルモン分泌が抑制されることが一因と考えられています。

新生児の糖代謝

胎児は発育エネルギーの大部分をブドウ糖(グルコース)に依存しているため、母体は妊娠中は糖代謝を変化させ、胎児にグルコースを優先的に供給できる仕組みをつくっています。
胎児は、子宮内において胎盤を介して母体から常にグルコースが供給を受けており、胎児自身でグルコースを産生することはありません。
このような代謝システムが、出生すると臍帯が切断されると母体からのグルコース供給が絶たれるため出生後血糖値は急激に低下し、生後1~2時間で最低値となります。
血糖が低下したことに伴いインスリンの分泌が抑制され、グルカゴンや糖質コルチコイド、成長ホルモンなどの分泌が抑制されグリコーゲン分解と糖新生が開始し、生後1~2時間後にグルコースが産生され血糖値が上昇します。また、糖だけではエネルギーを補うことができないため脂肪を分解してエネルギーとして利用します。
正常新生児では母乳やミルクを摂取することで低血糖を予防するすることができます。

新生児の低血糖

新生児の血糖値は、生理的に低く、在胎週数、生後日数および出生体重により異なります。
満期産児では生後24時間以内は血糖値が40/㎎/dl未満、生後24時間以降では血糖値が40~50㎎/dl未満の場合を新生児低血糖と考えられます。

新生児の低血糖の症状

新生児の低血糖は無症状のことも多く、疑われる症状としては、哺乳障害、無呼吸、多呼吸、異常な啼泣、痙攣、振戦、易刺激性、筋緊張低下、眼球上転、傾眠傾向、無欲様顔貌、チアノーゼなど多数あります。

新生児の低血糖の分類

血糖値は、以下のように分類されます。

  1. 早期一過性低血糖:生後6~12時間後に出現し、生後12~24時間で自然軽快します。低出生体重児、IDMによくみられます。
  2. 二次性低血糖:仮死、低酸素症、副腎出血などのほか疾患に続発して発症する低血糖。
  3. 古典的一過性新生児低血糖症:生後48~72時間以内に最も多く発症します。主にLFD児にみられ、糖の蓄積不足が原因です。
  4. 再発性持続性重症低血糖:まれですがインスリンの過剰分泌、インスリン以外のホルモン分泌障害、糖源病などの炭水化物代謝異常、アミノ酸代謝異常などが原因となります。

低血糖は早産児において発症頻度が高い症状の一つです。

早産児が低血糖に陥りやすい理由

子宮内で臍帯を介してグルコースを常時供給されていたものが、出生と同時に胎盤からの糖の供給が遮断されることになり、自分自身でグルコースを産生し血糖の維持されるようになります。
出生後しばらくは十分に哺乳することができず、肝臓や筋肉に貯蔵されたグルコースを利用することで低血糖に陥ることはありません。
しかし、早産児や低出生体重児の場合は、肝臓や筋肉のグルコースの貯蔵量が少ないためグルコースが枯渇し、糖新生が追いつかず低血糖に陥ってしまいます。
また、早産児や低出生体重児で経口摂取摂取が十分できない児では低血糖に陥るリスクが高くなります。
さらに、早産児や低出生体重児において仮死、低体温、呼吸障害、感染症、多血症がなどがあると糖の消費量が多くなるため、低血糖に陥るリスクが高くなります。

早産児の低血糖の治療

早産児などでは低血糖のリスクが高いため、出生直後のみでなく、血糖値が安定するため生後1時毎に血糖値測定がおこなわれます。
低血糖の治療としては、呼吸・循環の管理と同時に速やかに点滴によりブドウ糖の供給が行われます。

早産児の低血糖の予後

脳はグルコースを基本的なエネルギー源にしているため、持続的ないしは反復性の低血糖は神経学的後遺症につながる可能性がありますが、早期に発見され、適切な治療が行われ予後は良好です。

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