妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
スポンサーリンク

全身性エリトマトーデス(SLE)合併妊娠

全身性エリテマトーデスは妊娠可能年齢の女性に好発し、しばしば妊娠と合併することがあります。
妊娠直前に活動期にある場合、妊娠により増悪しやすいが軽症例では軽快することもあります。一般に、分娩前後に増悪する傾向があります。
SLEは不妊、不育症の原因となり流早産、死産、子宮内発育遅延のリスクが高い。これはSLE患者に抗リン脂質抗体を認めることが多いためです。

全身性エリトマトーデス(SLE)とは

全身性エリテマトーデスは、英語の病名は「Systemic Lupus Erythematosus」で、その頭文字をとってSLEと呼ばれます。
「Systemic」とは全身性という意味で、炎症が全身の色々な臓器に起こる特徴を指しています。また「Lupus」とはラテン語で「狼」を意味し、SLEの特徴的な症状の一つです。 蝶の形をした頬の発疹が、あたかも狼が噛んだあとに似ていることに由来するとされています。
SLEは若い女性に多く発症し、男女比は1対9前後とされています。
発症年齢は20~40歳が最も多く、特に20歳代が全体の40%を占め、10歳代と30歳代がこれに次いで多く25%前後とされています。
全身性エリトマトーデス(SLE)の症状は、全身、関節、皮膚、内臓などのさまざまな症状が次々に起こってきます。

妊娠が全身性エリトマトーデス(SLE)に及ぼす影響

妊娠直前に活動期にある場合は増悪する傾向にあります。
軽症例ではむしろ軽快することもありますが、分娩後に増悪することが多く、厳重な管理が必要となります。
全身性エリトマトーデス(SLE)の女性が妊娠しても流・早産、死産の危険が高いといわれます。これは身性エリトマトーデス(SLE)が患者に抗リン脂質抗体の一種であるループスアンチコアグフラント(LAC)が認められることが多いためです。抗リン脂質抗体の陽性の場合、動静脈血栓症、血小板減少、流・早産が多いことが知られ、抗リン脂質抗体症候群とよばれます。

全身性エリトマトーデス(SLE)合併妊娠の管理

全身性エリトマトーデス(SLE)の管理は、妊娠前、妊娠中、分娩、産後の全期間にわたって行う必要があります。

全身性エリトマトーデス(SLE)女性の妊娠許可の条件

  • 病態がステロイド維持量で10ヶ月以上寛解状態にあること
  • 重篤な臓器病変がないこと
  • ステロイドによる重篤な副作用の既往がないこと
  • 免疫抑制剤の併用がないこと
  • 抗リン脂質抗体、抗SS-A、抗SS-B抗体が陰性であることが望ましい
  • 出産後の育児が可能であること
  • 本人ならびに家族の理解および承諾が得られていること

全身性エリトマトーデス(SLE)妊娠中の管理と治療

  • 安静、過労を避ける
  • 日光、寒冷、ストレス、薬物を避ける
  • 食事療法
  • 薬物療法:副腎皮質ステロイドの併用
  • LACが認められる場合に対しては抗血栓療法(ヘパリン、低用量アスピリン)を併用する
  • 母体から抗SSーA抗体が移行すると新生児にSLE様の症状が起こることがあります
  • 母体においては急性増悪(心不全、腎障害など)が生じた場合には人工妊娠中絶を行う
  • 多臓器障害の増悪がなければ妊娠を継続します

妊娠を継続するためには、急性の増悪を早期に発見し対処することと、妊娠高血圧症候群の発現を予防し、腎機能の悪化を防ぐことが重要となります。

全身性エリトマトーデス(SLE)の分娩

自然分娩を原則とされますが、胎児発育不全や胎児機能不全などにより帝王切開の頻度が高い。分娩後は全身性エリトマトーデス(SLE)が増悪することがあるため、分娩開始時または分娩直後よりステロイド剤の投与量を増し、産褥2~3か月まで厳重に管理されます。

スポンサーリンク