妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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妊娠と単純ヘルペスウイルス感染症

単純ヘルペスウイルスにはHSV-1とHSV-2の2つの型があります。
HSV-1は唇にできる単純ヘルペス(口唇ヘルペス)や眼の角膜にできるびらん(単純ヘルペス角膜炎)の原因となるウイルスです。
HSV-2は陰部ヘルペスの原因となります。
HSV感染症では、皮膚や粘膜にとても小さな水疱が集団で出現し、いったん治まってもウイルスは感染部位へ神経線維を供給する神経細胞が集まった神経節の中で休眠(潜伏)状態になって存在し続け、その後、ウイルスは周期的に再活性化し、増殖を始め、神経線維を伝わって皮膚へ戻り、以前の感染部位と同じ部位に水疱を出現させます。

妊娠と単純ヘルペスウイルス感染

単純ヘルペスウイルス1型、2型による母子感染症には、胎内感染による先天性感染症と産道感染などによる新生児ヘルペスとがあります。
小頭症、水頭症などの中枢神経系異常を示す先天性感染症はきわめてまれです。一方、新生児ヘルペスはきわめて重篤な疾患です。
性器ヘルペスを認めた妊婦が経膣分娩した場合、新生児ヘルペス発症率は、初感染50%、再発型では0~3%とされます。新生児ヘルペスは、全身型、中枢神経型、皮膚型の3病型に分類され、全身型は最も重篤で生後1週間以内に発生します

単純ヘルペスの診断

外陰病変部や子宮頚管からのHSV分離により診断が確定します。
母体血清中の特異IgMとIgGを1~2週間隔で検査をおこない、初感染か非初感染かの鑑別が行われます。

単純ヘルペスの治療

性器ヘルペスが確認された場合、妊娠初期では軟膏塗布、妊娠中~後期であれば内服薬が重症例では点滴静注による治療が検討されます。
分娩時に膣・外陰に病変が認められた場合、帝王切開の適応となります。
1ヶ月以内に初感染が確認された場合や1週間以内に再発が確認された場合には帝王切開が考慮されます。
出産後に臍帯血ないし新生児の血液で特異IgMを測定し、皮膚、眼、口腔、性器からウイルス分離検査がおこなわれます。

新生児ヘルペス

妊婦が性器ヘルペスに感染すると、垂直感染(経胎盤、上行性、産道)をきたすことがります。
このうち特に問題となるのは経膣分娩時の産道感染で母体が初感染である場合は、外陰部潰瘍からのウイルス排泄量が多いため、約30~60%の児が新生児ヘルペスを発症します。
新生児ヘルペスの予後は悪く、このため性器に病変がある場合や初感染である場合は帝王切開が行われます。

新生児ヘルペスの分類

新生児ヘルペスは、全身型、中枢神経型、表在型(皮膚型)に3病型に分類されます。

  • 全身型…生後1週目ころから症状があらわれ、多臓器不全によって死亡することが多い。
  • 中枢神経型…脳炎による中枢神経症状(けいれん、無欲状態など)の症状がみられま、生命予後は不良ではありませんが、神経学的後遺症を残すことがあります。
  • 表在型…皮膚、口腔、目に限局する水疱がみられますが、比較的軽症で予後は良好です。

※中枢神経型と全身型は、水疱などの特異的な症状がみられないことも多く、診断がむずかしく、早期発見、早期治療が重要といえます。

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