妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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妊娠性鉄欠乏性貧血

貧血とは、ヘモグロビン濃度(Hb)が基準より低下しているものと定義されており、妊婦では11g/dl以下をいい、妊婦にみられる貧血を総称して妊娠貧血といいます。
妊婦のヘモグロビン濃度(Hb)の低下には病的低下のものか胎児や胎盤への鉄供給の増加や循環血液量の増加による生理的な血液希釈に基づくものがあります。
妊婦の循環血液量は、妊娠中期(妊娠28週から34週)に最も増加し、増加量は妊娠前に比べて約50%に及びます。
循環血液量の増加は子宮胎盤循環を円滑にすると同時に、血栓や梗塞の防止、分娩時の出血に対する生理的な対応と考えられています。
このため妊婦にHbの低下は、妊娠初期には貧血の判断基準となるが、妊娠中期以降では生理的血液希釈による見かけ上の貧血であるため、鉄材を投与するか否かはMCV、MCHCを参考に決められます。

鉄欠乏性貧血とは

妊婦貧血とは、妊娠に起因する貧血をいい、偶発合併症を有しない妊婦の妊娠経過中に認められるものです。このうち鉄欠乏性の貧血を妊娠性鉄欠乏性貧血といいます。

妊娠性鉄欠乏性貧血の診断

妊娠初期、妊娠28週前後および34週前後の計3回Hb濃度、ヘマトクリット(Ht)値、赤血球数、白血球数などを調べます。
血液検査において、通常の診断基準はHb濃度11.0g/dl未満、またはHt値33%未満のものを貧血といいます。Hb濃度により貧血の程度を以下のように分類します。
・軽症:Hb濃度11.0g/dl未満からHb濃度10.0g/dl
・中等度:Hb濃度10.0g/dl未満からHb濃度9.0g/dl
・重症:Hb濃度9.0g/dl未満
*貧血は種々の原因によって生じるため、赤血球形態、血清鉄、血清フェリチン、総鉄結合能(TIBC)、網状赤血球数などがおこなわれます。

妊娠性鉄欠乏性貧血の症状

妊娠性鉄欠乏性貧血の大部分は無症状で重症になると皮膚、爪などの蒼白感や動作時の動悸、息切れなどがおこります。
鉄は食物より摂取したうち吸収されるのは10%といわれています。また、妊娠時は循環血液量の増大、胎児胎盤系の鉄の需要の増加により最低4mg/日鉄分を必要とします。したがって、Hb濃度が正常であっても妊娠中は貯蔵鉄を消費するため、妊娠中は鉄分の多い食事を摂るよう心がけましょう。

妊娠性鉄欠乏性貧血の治療

妊娠性鉄欠乏性貧血の治療の原則としては、鉄剤の経口投与をこないます。
妊娠中、とくに貧血時は鉄吸収率は25%くらいに上昇するといわれており、常用量として100mg/日前後が適当量です。
胃腸症状が強い場合、上部消化管疾患などによる吸収障害がある場合は経静脈投与にておこないます。
経口投与では、鉄過剰症になることはありませんが、経静脈投与では適宜血清鉄、血清フェリチンなどを測定し、その発症に注意する必要があります。

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