妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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妊娠に伴う口腔の変化

「一子を産めば一歯を失う」などといわれるように妊娠が妊婦の口腔内の環境に大きな影響を及ぼしていることはよく知られています。
妊娠中は生理的な副甲状腺機能亢進状態にあり、副甲状腺ホルモンの分泌が過剰になっていて骨の代謝回転速度は亢進しています。しかし、胎盤に由来するエストロゲンがこれを抑制し母体の骨の保護しているため、通常では母体の骨中のCaはむしろ増加します。胎児の発育にCaが必須であるからといって形成の完了した歯からCaが吸収されることはありません。
齲蝕の原因は、歯面上で増殖したプラーク中の齲蝕細菌が産生した乳酸などの酸が、歯牙のエナメル質を脱灰することによります。
妊婦は食欲が亢進し、間食や食事の回数が増え糖分摂取が頻繫になるため、齲蝕になりやすい環境にあるといえます。さらに唾液の酸性化、胃液の逆流による口腔内の酸性化などもあいまって、口腔内の清潔を保ちにくくなることが齲蝕の要因と考えられます。
妊娠中は口腔衛生に注意し、疼痛を起こしそうな齲蝕は、妊娠5~7か月の安定期に治療しておいたほうが良いでしょう。

妊娠に伴う歯ぐきの変化

歯周組織はプロゲステロンやエストロゲンの影響を受け、炎症を起こしやすいことはすでに述べました。さらに、妊娠中は細胞性免疫能が抑制されるため、歯肉縁と歯間乳頭部に発赤と腫脹が認められ、いわゆる妊娠性歯肉炎になりやすく妊婦の約半数に認められますが、この変化はプロゲステロンやエストロゲンの分泌量が増加する期間と一致しており、妊娠後期や分娩後には回復するので特別な処置を要しないことが多いが、急激な歯肉増殖をきたし、充血や浮腫を伴った深紅色の腫瘤が歯間部に発生することがあります。これは妊娠性エブーリスとよばれ、外科的切除を必要とします。発生頻度は1~2%程度です。

妊娠に伴う唾液の変化

妊婦の唾液分泌量は非妊時に比し減少しますが、分娩後はすみやかに非妊時の値に戻ります。pHも低下し酸性側に傾きますが、妊娠悪阻や胸やけはさらに酸性となります。
まれに病的に唾液分泌量が増加し、1日に1000ml以上にも達することがあります。流涎とよばれますが、分娩後はただちに元にもどります。

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