妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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妊娠に伴う腎・泌尿器系の変化

妊娠すると腎臓は形態的にも機能的にも変化します。

腎臓の形態的変化

妊娠により腎臓の直径は約1㎝増大し腎盂・尿管の拡大を認め、妊娠22~24週で最大になって水腎症をしめすようになりますが妊娠後期にはその程度は減弱します。
とくに右尿管系は著明で、これは妊娠によって大きくなった子宮が右方へ傾くことと怒張した右卵巣静脈への機械的圧迫のためで上部尿管系にその傾向が強くみられます。

腎臓の機能的変化

循環血液量の増加に伴って腎血漿流量(RPF)の増加と糸球体濾過率(GFR)が亢進します。
腎血漿流量(RPF)の増加は、黄体ホルモンによる平滑筋の筋緊張の低下に伴い末梢血管抵抗が減弱し、この結果腎灌流圧が低下し、その結果レニン・アルギオテンシン系の活性亢進をきたし、Naの再吸収が促進されることが原因です。
腎血漿流量(RPF)は、妊娠初期より増加し妊娠中期にかけて非妊娠時の約50~80%増加しますが、妊娠後期には非妊時レベルまで低下します。
糸球体濾過率(GFR)は妊娠初期より増加しはじめ妊娠14週頃には非妊時の約50%増加し、その後は、腎血漿流量(RPF)の変化と異なり妊娠後期まで増加が維持します。
そのため腎機能の指標となる血清クレアチニン血・尿素窒素値(BUN)ならびに血清尿酸値は、それぞれ非妊時の約2/3程度まで低下します。

糖排泄閾値の低下

糖排泄閾値は、非妊時では血糖値レベルで170~180mg/dlですが妊娠中は140~150mg/dlに低下します。これは尿細管再吸収能の低下によるもので約6人に1人の割合で尿糖が陽性となります。(腎性尿糖)そのため尿糖が確認されても通常は問題となることはありませんが、2回以上にわたって陽性となった場合には糖尿病を疑う必要があります。

たんぱく尿

健康な人でも1日150mgまでの尿たんぱくの排泄がみられますが、妊婦においては1日260mgまでの排泄は生理的範囲です。

1日尿量の増加

胎盤から産生される抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)分解酵素などの関係で妊娠中は1日尿量が増加する傾向にあります。

腎盂・尿管拡張

妊娠中は腎盂から尿管上部2/3における拡張がみられます。
大多数は軽度の拡張にとどまりますが約20%のケースが中等度以上の拡張を約3~4%が高度拡張を呈します。この生理的な腎盂・尿管拡張の発症には尿管の蠕動を抑制する黄体ホルモンやプロスタグランディンE3などの内分泌因子に加え、子宮の右軸回旋という物理的因子が関与しています。

頻尿・尿失禁

妊娠に伴う骨盤内循環血流の増加は、骨盤内臓器の筋組織ならびに結合組織の過形成をもたらします。一方、妊娠子宮による物理的圧迫により膀胱内圧は上昇し、膀胱容量も低下します。妊娠後期には少なくとも妊婦の3人に1人以上が腹圧性尿失禁がみられます。
さらに、妊娠中は1日尿量の増加が加わり、妊婦は頻尿になります。

体位の影響

妊娠中は仰臥位、側仰位によって腎機能は高まり、立位では低くなります。
仰臥位では大きくなった子宮が下大静脈を圧迫するため腎臓に流れ込む血液量が減少し、尿の産生が低下します。また、側仰位をとった場合、子宮が下大静脈を圧迫を緩和するため尿の産生が増えます。さらに大きくなった子宮が膀胱を圧迫するため頻尿となります。

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