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ヒルシュスプルング病

ヒルシュスプルング病は、先天的に消化管の動きを制御する腸の神経節細胞が肛門から口側に様々なところまで連続してみられないためにその部分で蠕動運動が起こらず、腸閉塞、または慢性便秘を起こす疾患です。

ヒルシュスプルング病の頻度

ヒルシュスプルング病の発生頻度は約5000人に1人で他の消化管奇形と異なり低出生体重児が5%と少ないのが特徴です。
男女比は3:1と男児に多く、病変範囲は長くなるほどほど女児の占める割合が高くなります。
病変範囲は80%がS状結腸以下の短節無神経節症で、S状結腸を超える長節無神経節症が20%であり、うち全結腸無神経節症が約5%で回腸末端部から30cmを超える広域無神経節症が約3.5%を占めます。
ヒルシュスプルング病の70%は孤立例ですが 12%に染色体異常を合併し、うち90%以上はダウン症である。また、18%に他の奇形を合併し、心奇形や消化管奇形、口唇・口蓋裂、多・合指症などを認める。合併奇形は無神経節腸管の長い例や家族内発症例に多く見られます。

ヒルシュスプルング病の病型分類

ヒルシュスプルング病は無神経節腸管の範囲により、以下の5型に分類されます。

  1. short segment type:下部直腸に限局
  2. rectosigmoid type:S状結腸までのもの
  3. long segment type:S状結腸より口側の結腸に及ぶもの
  4. entire colon type:全結腸に及ぶもの
  5. extensive type:回腸終末部を越えて口側小腸に及ぶもの

※5型のうちshort segmentおよびrectosigmoid typeが本症の約80%を占めます。

ヒルシュスプルング病の症状

神経節細胞の欠如がごく狭い範囲に限定されている場合は、ある程度発育するまで症状が現れないこともあります。
病変の長さにより臨床症状の程度に差がありますが、通常は新生児期に胎便排泄遅延や腹部膨満、嘔吐などの腸閉塞症状を呈します。 胎便は正常新生児では生後24時間以内に排泄が認められますが本症では大部分の症例で排泄が遅延します。
便やガスが十分に排出できないため腹部の膨満や哺乳不良を認め、体重増加不良となり、嘔吐も次第に胆汁性となります。
この状態に細菌感染が併発すると腸炎を起こし、腸内の圧力上昇が限界を超えると腸管穿孔などの重篤な状態になります。

ヒルシュスプルング病の診断

  1. 直腸診:直腸内に便を触れず、挿入した指を引き抜くと多量のガスや水様便の噴出をみることがあります。
  2. 腹部単純X線検査:腹部全体に腸管ガスの増加、拡張を認めるが、直腸は拡がらずガスが貯留しない。
  3. 注腸造影:肛門付近の神経のない異常な腸管は細く写り、次第に口側の拡張した腸管が写ります。
  4. 直腸肛門内圧検査:ヒルシュスプルング病では神経が無いために直腸肛門反射が欠如するため、肛門内の圧力の変化がありません。
  5. 直腸粘膜生検:粘膜下層の神経節細胞欠如とアセチルコリンエステラーゼ陽性の外来神経線維増生により確定診断が得られます。

ヒルシュスプルング病の治療

ヒルシュスプルング病と診断されれば外科的治療が必要となります。
腹腔鏡を利用した手術も行われるようになってきています。
保存的治療無効例や腸炎発症例では拡張している正常腸管に人工肛門を造設する必要があります。
手術後に排便を行うための訓練をおこない、成長と発育が順調に進むよう長期にわたって外来での経過観察が必要となります。

ヒルシュスプルング病の予後

病変が全結腸以上に及ぶ症例を除くと死亡率は2~3%程度であり、術後排便機能に関してはいずれの術式を行っても、習熟すれば約80%に正常な排便機能が期待できることから予後は良好といえます。
術後合併症としては、腸炎・排便障害(便失禁・便秘)そして縫合不全などが報告されており、全体として術後約30%の症例でこれらの症状が診られると報告されています。病変部分の長い場合ほど、合併症が多くなります。

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