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新生児壊死性腸炎

新生児壊死性腸炎(NEC)は、腸管の未熟性を発症の基盤に腸管虚血による粘膜損傷、細菌の侵襲、人工乳による腸管へのストレスなどが関与して発症する後天性消化管疾患です。

新生児壊死性腸炎の頻度

新生児壊死性腸炎(NEC)の発症頻度は全入院患者の0.15~0.25%で、その2/3~3/4な極低出生体重児で占められています。また、死亡率は50~55%、超低出生体重児に限れば60~70%と高率となります。75%は未熟児に特に出生時に羊膜炎を伴う前期破水や仮死があった場合に高頻度に発生。90%が生後10日までに発症します。
男女比は1:2と女児に多くみられます。
十二指腸を除く全腸管に発生するのですが好発部位は回腸下部、盲腸、上行結腸です。
母乳栄養児に比較して人工栄養児で高い発生率を示します。

新生児壊死性腸炎の要因

新生児壊死性腸炎(NEC)の原因はまだはっきりとはわかっていません。
新生児壊死性腸炎(NEC)の90%は低出生体重児に発症し、腸管の未熟性、循環不全、細菌感染が要因となります。

新生児壊死性腸炎の症状

新生児壊死性腸炎(NEC)は典型的に、超低出生体重児に経腸栄養を開始して数日を経った頃に発症します。
初期には腹部膨満、胃内吸引量の増加、胆汁様胃内吸引物・嘔吐、粘血便が出現し、無呼吸発作の増悪、徐脈、低体温をともなう場合もあります。
症状が進むとショック状態(全身虚脱、蒼白、低血圧、代謝性アシドーシス)などのDICの症状を呈します。

新生児壊死性腸炎の検査所見

腹部単純X線検査は診断に不可欠で、初期には腸管拡張像、腸管ガス固定像を呈します。腸管壁内ガス像および肝内門脈ガス像は本性に特徴的で診断の意義が大きく腹膜炎から穿孔に至ると腹水、腹腔内遊離ガス像を認めます。
腹部超音波検査は、門脈内ガス像の検出で腹部X線より有効な補助診断法の一つです。

新生児壊死性腸炎(NEC)の診断

新生児壊死性腸炎(NEC)の診断は、臨床所見に加え、胸部レントゲン写真、心エコーが行われます。
鑑別のため便・吐物・血液の細菌検査、血清電解質、生化学、血液・凝固機能検査を行い、レントゲン検査を繰り返し経過観察が行われます。

新生児壊死性腸炎の治療

新生児壊死性腸炎(NEC)の治療は上記に述べた3つの時期によって異りますが、新生児壊死性腸炎(NEC)は予防、早期診断、早期治療が重要で、多くの症例では疑診の段階からの治療が必要になります。
新生児壊死性腸炎(NEC)の疑いがあれば、まず内科的治療が主体となり、外科的治療は穿孔例や、内科的治療に反応せずに状態が増悪した症例に行われます。
内科的治療の基本は腸管の安静と合併症や敗血症の予防で、状態の悪化を防ぐことにあります。
経口(腸)栄養の中止、経鼻胃管を挿入し消化管の減圧、電解質バランスおよび蛋白補給に留意した輸液、適切な抗生剤の使用、積極的な呼吸・循環管理を行う。保存療法で全身状態の改善を認めれば、症状、特にCRPの改善を目安にして慎重に経腸栄養を再開します。
腸管穿孔あるいは腸管壊死がある場合には手術適応となり、腸管穿孔は腹部単純撮影での気腹像所見で確定されます。

新生児壊死性腸炎の予後

新生児壊死性腸炎(NEC)での死亡率は30~40%とされ、救命率は病期、壊死範囲および出生体重で異なります。
超低出生体重児で広範囲壊死の場合の救命率は10%以下で、日本小児外科学会、2003年新生児外科全国集計の結果でも低出生体重児での死亡率は壊死性腸炎が最も高いとされています。

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