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呼吸急迫症候群

呼吸窮迫症候群(RDS)とは、在胎期間37週未満で出生した早産児など未熟性による肺サーファクタントの産生障害により、肺胞の広範な無気肺を呈する呼吸障害をいいます。

肺サーファクタントとは

肺サーファクタントとは、肺胞の細胞から産生・分泌される表面活性物質のことで脂質(脂肪)と蛋白質の混合物質で肺胞内側の表面を覆い、その表面張力を弱め、呼吸サイクルの間肺胞が拡張した状態を保てるようにします。
通常、サーファクタントの産生は妊娠約34週ごろから始まります。

呼吸窮迫症候群の発生頻度

呼吸窮迫症候群(RDS)は早期産低出生体重児に発症します。
その頻度については在胎28週で70%、在胎30週で55%、在胎32週で35%、在胎34週で20%の割合で発症し、36週以降に出生した児ではほとんどみられません。
またRDS発症危険因子としては、周生期仮死(常位胎盤早期剥離、前置胎盤出血などによる胎児仮死)、陣痛発来前の帝王切開、双胎第2子、糖尿病母体からの出生児などがあります。

呼吸窮迫症候群の発症機序

呼吸窮迫症候群(RDS)は、肺サーファクタントの欠乏のため表面活性が低下、すなわち肺の広がりやすさが低下し、機能的残気量(息を吐いた後に残る空気の量)が正常に保てず、呼気時に肺胞が虚脱状態になります。このため、吸気では虚脱した肺胞を再び膨らせるために非常に高い吸気圧を必要とし、また呼気では機能的残気量を少しでも維持しようと呻吟により気道内圧を高めようとします。

呼吸窮迫症候群の症状

出生後に呼吸窮迫症状の4主徴がみられます。

  1. 多呼吸(在胎週数30週未満の児では多呼吸にならず無呼吸を伴うことも多い)
  2. 呻吟
  3. 陥没呼吸
  4. チアノーゼ

呼吸窮迫症候群の診断

胸部レントゲンにおいて網状顆粒状陰影、気管支樹枝像の2つが特徴的画像として確認できます。
また、胃液のマイクロバブルテストにより胃液中のサーファクタントの存在を確認します。

呼吸窮迫症候群(RDS)の治療

呼吸窮迫症候群(RDS)の治療としては、人工肺サーファクタント充填療法が根本的な治療として行われます。
人工肺サーファクタントは、牛の肺から抽出したもので診断後できるだけ早く投与することが重要です。人工肺サーファクタント充填療法が開発されてから本疾患の死亡は確実に防げるようになりました。
肺サーファクタント投与後、状態によって人工換気、酸素投与が行われます。

呼吸窮迫症候群の予防

在胎34週未満の切迫早産の母体にステロイドを投与することにより、出生児の呼吸窮迫症候群(RDS)の発症率を減少させることができます。

呼吸窮迫症候群の予後

人工呼吸や人工肺サーファクタント補充療法により順調に回復し、気胸などの合併症がなければ呼吸窮迫症候群自体の予後は改善されています。しかし、在胎24週未満の未熟性の強い早産児では呼吸窮迫症候群自体の予後も依然として厳しく、また呼吸窮迫症候群が順調に改善しても、動脈管開存症や敗血症、頭蓋内出血などの合併症が生命予後に大きく影響します。

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