妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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新生児の筋緊張

筋の伸張に対する受動的抵抗、または筋に備わっている張力のことで神経支配のある筋が持続的に持っている筋の一定の緊張状態を筋緊張といいます。
筋緊張は生体の姿勢保持機構や体温調節機構に関与しており、特に姿勢保持機構は運動あるいは姿勢保持の際に活動する骨格筋の準備状態に重要な意味を持つとされ筋トーヌスともいいます。
正常な筋では、完全に力をぬいて弛緩させた状態させた安静時の状態でも、軽度の緊張がみられ、筋を受動的に動かすと一定の抵抗を感じることができます。

新生児の筋緊張の評価

新生児は深睡眠時などは筋緊張が低下していることも多いため、一般的には、開眼し、自発運動のない状態での評価が良いとされています。
また、在胎週数が短いほど筋緊張は低下するため、在胎週数に応じた評価が必要となります。

  1. 成熟児では蛙様姿勢(frog posture:四肢体幹ともにベットに付着している姿勢)を呈していれば筋緊張低下を示唆します。
  2. 早産児では在胎週数によって正常な姿勢が異なり、在胎週数に応じた姿勢の評価を行う必要があります。在胎週数が少ないほど四肢は伸展位をとり、筋緊張は低下しています。
  3. 後弓反張(opisthotonic posture:頭部が後屈し、四肢を伸展させている姿勢)は筋緊張の亢進を示唆します。
  4. 児の姿勢だけではなく、手足の受動的運動を観察し、腕や脚の戻り反応の低下や踵耳試験の亢進、スカーフ徴候などは筋緊張の低下を意味します。

新生児の筋緊張低下とは

新生児を仰臥位に寝かせたとき、膝の外側が床にベタッとついた状態で足を開き、手足をやや伸展した肢位をとるときには筋緊張の低下と考えます。
ちょうど蛙が仰向けになった状態に似ていることから蛙肢位と呼ばれます。
筋緊張が弱いと上肢や下肢を屈曲伸展させてもそれを嫌がるような抵抗感が弱く、なすがままでクタッとした状態となるためフロッピーインファントと呼ばれます。
筋緊張低下の新生児には2つのタイプに分けることができます。
一つは、筋肉の力は正常で緊張が低下しているタイプでダウン症候群の赤ちゃんに特徴的にみられますが、それ以外にも全般的に発達に遅れのある赤ちゃんにみられることがあります。
もう一つのタイプは筋肉の力そのものが弱い子供で筋肉の病気がある場合と脊髄の神経の病気の場合とがあります。こうした病気がある子の多くは、生まれたときから母乳やミルクがうまく飲めない、呼吸困難がある、などの症状がみられます。また、筋肉の病気で顔の筋肉も侵されるといつも口を半開きにして、しまりのない表情になります。
このタイプには、重症筋無力症、先天性ミオパチー、福山型先天性筋ジストロフィー症、脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒーホフアン病)などの病気が含まれます。

新生児の筋緊張亢進

筋緊張が亢進した状態を過緊張といいます。
新生児における筋緊張亢進とは、筋緊張低下とは逆で筋肉を触れると硬く、曲げている手足を伸ばそうとすると強い抵抗感を感じます。
クタッとした感じはなく、手を振っても手と腕が一体となった硬い棒のような感じに動きます。
筋緊張の亢進は痙縮と固縮、さらにその両者の性質をもつ強剛痙縮に分けられます。
痙縮、固縮は同じ筋トーヌスの亢進であるが各々の機序は異なります。
痙縮は筋トーヌスおよび相動性筋伸張反射の病的亢進を主とする病態で痙縮の特徴は「関節を他動的に動かすと筋が硬く、被動性が減弱している。さらに筋を受動的に急速に伸展する際、はじめに抵抗があるが伸展に伴って急速に抵抗がなくなる(折りたたみナイフ現象)」というものであり、速度依存性に筋の抵抗および腱反射が亢進した状態をいいます。
固縮(強剛)とは、屈筋も伸筋も筋トーヌスが亢進した状態であり、錐体外路障害の症状です。 関節運動により特定の筋を伸展させた時に、一定の抵抗としてとらえられます。
筋緊張亢進は新生児脳症を引き起こす様々な原因によって出現します。例えば、代謝異常症、低酸素性虚血性脳症、新生児脳卒中、胎内感染、先天奇形、外傷などです。

筋緊張異常がみられる新生児の検査

筋緊張低下のある児の多くは大脳に問題をもっている場合が多く、この場合は重度の筋力低下は伴わず、脳機能障害の他の徴候(嗜眠、嚥下障害、原始反射異常)が認められます。また、筋緊張異常では低酸素性虚血性脳症(HIE)、代謝異常、感染症に起因する新生児の急性疾患の顕著な臨床症状の1つである場合もあります。
これらのことから、頭部超音波検査、血液検査(血液培養、一般検血、血液ガス、アンモニア、乳酸、CRP)、髄液検査、脳波検査などが行われます。

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