妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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新生児の下血・血便

下血とは食道や胃、十二指腸の上部消化管だけでなく、小腸や大腸などの下部消化管も含めた全領域の消化管から出血した血液が肛門から排出されることをいいます。
血便とは血液が混じった糞便をいいます。

新生児の下血・血便の出血の場所による違い

通常は消化液などによって血液がコールタール様の真黒色に変化するため下血をタール便ともいいます。しかし、出血量や腸管内通過時間によって血液の性状は変化するため、排出される血液は赤色に近い場合もあります。
例えば、肛門に近い直腸やS状結腸からの出血では、新鮮血の排出や便の周囲に鮮血の付着を認めることがあります。
痔からの出血は鮮血です。これらは血便と言い、血便は鮮血便と粘液を混じた粘血便に分けられます。

新生児メレナ

新生児の消化管出血は、吐血と下血を含めて新生児メレナと呼ばれます。メレナとは黒色便を意味し、以前は新生児消化管出血の大部分を占めると考えられていたビタミンK欠乏性出血の代名詞として使用されていましたが、最近ではすべての新生児消化管出血を一括して新生児メレナと呼ぶことが多くなっています。

新生児における下血・血便の原因による分類

新生児における下血・血便の原因による分類は大きく分けて、母体血の嚥下によるもの、出血性素因(血液凝固障害)によるもの、器質的病変によるものの3つに分類することができます。

母体血の嚥下による下血・血便

分娩時に母体血を嚥下したり、授乳の際の乳頭周囲からの出血を飲み込んだことにより血便が排泄される。これを仮性メレナといいます。

出血性素因による下血

  1. 先天性凝固因子欠乏症:血友病、無フィブリノゲン血症、第ⅩⅢ因子欠乏症など。
  2. 新生児ビタミンK欠乏性出血症:真性メレナなど。
  3. 凝固因子産生障害:肝障害、早産児、不当経量児、薬剤投与など。
  4. 血小板減少症:自己免疫性血小板減少症、感染症、新生児仮死、白血病、再生不良性貧血、ウイルス感染症など。

器質的病変による下血・血便

急性胃粘膜病変、消化性潰瘍、腸回転異常症、細菌性腸炎、腸管アレルギー、壊死性腸炎、腸重積、肛門周囲炎・裂傷によるなどがあります。

新生児の下血・血便時の注意点

下血時の注意点としては以下のようなものがあげられます。

  1. なんとなく元気がない
  2. 出血量が多い
  3. 顔色や皮膚色
  4. 嘔吐、腹部膨満、腹部表面の色調、その他の消化器症状
  5. 下血以外の出血症状

新生児の下血・血便時の検査と診断

下血物が児自身の消化管出血に由来するか、母体血の嚥下に原因するかの鑑別が必要でApt試験が行われ、その他に血液検査(貧血、血小板減少の有無)、肝機能異常の有無、出血傾向の有無、便培養(細菌性腸炎の有無)、X線検査、上部消化管造影、注腸造影、内視鏡・腹腔鏡検査などにより総合的に診断、重症度の評価を行います。

新生児の下血時の治療

原因によって異なりますがビタミンK補充、新鮮凍結血漿輸血、血小板輸血、胃洗浄、制酸薬、胃粘膜保護薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、高圧注腸、外科的手術などがあります。

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