新生児の吐血
新生児の吐血とは、食道や胃、十二指腸などの消化器系の器官から出血した血液を口から排出することをいいます。
食道からの出血の場合は、新鮮血で赤色を呈し、胃や十二指腸からの吐血は吐き気や嘔吐をともない、胃酸の影響で血液が変色し茶褐色を呈します。
新生児の出血の場所による吐血の違い
出血してから吐血までの時間の違いによって吐物の色が異なります。
食道からの出血の場合には吐物は鮮血色で真っ赤な色を呈します。
胃や十二指腸からの出血の場合には、出血してから数十分から数時間が経過し、胃酸によって塩酸ヘマチンへ変化するために、出血した血液は黒色化し茶褐色となります。
また、口から血液を吐く場合、肺から出血する喀血や鼻出血や口腔内からの出血を飲み込んだことが原因であることもあります。
新生児メレナとは
新生児における吐血は消化管出血によってみられ、新生児の消化管出血は、下血を含めて新生児メレナと呼ばれます。
メレナとは黒色便を意味し、以前は新生児消化管出血の大部分を占めると考えられていたビタミンK欠乏性出血の代名詞として使用されていましたが、最近ではすべての新生児消化管出血を一括して新生児メレナと呼ぶことが多いようです。
新生児における吐血の原因による分類
吐血は大きく分けて母体血の嚥下によるもの、出血性素因(血液凝固障害)によるもの、器質的病変によるものの3つに分類することができます。
母体血の嚥下によるもの
分娩時に母体血を嚥下したり、授乳の際の乳頭周囲からの出血を飲み込んだことにより吐血し、これを仮性メレナといいます。
出血性素因によるもの
- 先天性凝固因子欠乏症:血友病、無フィブリノゲン血症、第ⅩⅢ因子欠乏症など。
- 新生児ビタミンK欠乏性出血症:真性メレナなど。
- 凝固因子産生障害:肝障害、早産児、不当経量児、薬剤投与など。
- 血小板減少症:自己免疫性血小板減少症、感染症、新生児仮死、白血病、再生不良性貧血、ウイルス感染症など。
器質的病変によるもの
急性胃粘膜病変、消化性潰瘍、腸回転異常症、細菌性腸炎、腸管アレルギー、壊死性腸炎、腸重積など。
新生児の吐血時の注意点
吐血時の注意点としては以下のようなものがあげられます。
- なんとなく元気がない
- 出血量が多い
- 顔色や皮膚色
- 嘔吐、腹部膨満、腹部表面の色調、その他の消化器症状
- 吐血以外の出血症状
新生児の吐血時の検査と診断
吐血物が児自身の消化管出血に由来するか、母体血の嚥下に原因するかの鑑別が必要でApt試験が行われ、その他に血液検査(貧血、血小板減少の有無)、肝機能異常の有無、出血傾向の有無、便培養(細菌性腸炎の有無)、X線検査、上部消化管造影、注腸造影、内視鏡・腹腔鏡検査などにより総合的に診断、重症度の評価を行います。
新生児の吐血時の治療
原因によって異なりますが新生児の場合には少量の出血であっても重症のこともあるため、絶食にて輸液、輸血、胃へのチューブ挿入、ビタミンKなどの薬剤投与が行われます。