新生児の貧血
貧血とは末梢血液中の赤血球数またはヘモグロビン量、ヘマトクリット(Ht)値が正常より減少した状態と定義されますが、一般的には赤血球の本来の働きでもある肺での酸素の取り込みに重要なヘモグロビン(Hb) 値が、臨床上の貧血の判定項目として用いられています。
新生児の貧血とは
新生児は、出生時の血液喪失や短い赤血球寿命、赤血球産生を促進する糖蛋白ホルモンのEpo産生低下、急速な発育などにより一時的に生理的貧血となることがあります。
また、新生児の骨髄は生まれてから3〜4週間は新しい赤血球をつくることができません。
貧血は、赤血球の破壊が早く進みすぎた場合、大量の血液が失われた場合、これらの状況が同時に起こった場合に生じます。
早期新生児期(生後7日まで)は静脈血でヘモグロビン(Hb)値13g/dℓ以下、日齢7日~生後22ヵ月まではヘモグロビン(Hb)値10g/dℓ以下を貧血とされています。
低出生体重児では生後1~3ヵ月までは8g/dℓ以下を病的貧血とみなします。
新生児の貧血の原因
新生児における貧血は、出血によるもの、溶血によるもの、骨髄での産生不全によるもの、混合型の4つに分けることができます。
新生児の出血性貧血の原因
出血性貧血の原因としては以下のようなものがあげられます。
- 胎盤・臍帯の異常による出血…前置胎盤、胎盤早期剥離、胎盤・臍帯損傷など。
- 臍帯を介した血液移行による出血…胎児母体間輸血症候群、双胎間輸血症候群など。
- 体内出血…頭蓋内出血、頭血腫、帽状腱膜下出血、腹腔内出血など。
新生児の溶血性貧血の原因
溶血性貧血の原因としては以下のようなものがあげられます。
- 母児間血液型不適合…ABO、Rh不適合など。
- 母体の自己免疫性溶血性貧血など。
- 遺伝性…遺伝性球状赤血球症、G-6PD欠損症など。
- ヒトバルボウイルスB19感染症など。
新生児の骨髄低形成による貧血の原因
骨髄低形成による貧血の原因としては以下のようなものがあげられます。
- Diamond-Blackfan型貧血(DBA)
- 先天性白血病
新生児の混合型による貧血の原因
による貧血の原因としては以下のようなものがあげられます。
- 感染症…細菌やウイルスによる骨髄抑制と溶血の亢進など。
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)など。
新生児の貧血に伴う症状
新生児における貧血の症状や徴候は、貧血の原因にかかわらず同じような症状が見られますが、貧血の程度や貧血の発症速度によって様々な症状が起こってきます。
一般的に急性出血に伴う貧血では、皮膚色蒼白、不活発、心拍数増加、呼吸障害、血圧低下などのショック症状がみられます。
溶血性の貧血の場合は、黄疸がみられます。
新生児の貧血にの治療
治療の必要性性、貧血の程度と随伴する病態によって様々で、軽度の貧血があるだけでその他の点では健康な正期産児および早期産児では一般に治療の必要はありません。
治療は診断された基礎疾患に対して行われ、状態によっては輸血または交換輸血がおこなわれます。