妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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産褥熱

分娩が終了し、妊娠・分娩に伴う母体の生理的変化が非妊時の状態に回復するまでの状態をいい、その期間を産褥期といいます。
産褥期とは出産後6~8週間をさします。
産褥熱とは、産褥期に発生する性器の細菌感染に由来する熱性疾患をいいます。
一般的には、産褥24時間移行10日間に38℃以上の発熱が2日以上持続する場合をいいます。産褥熱は、産褥期に好発する感染症の総称ですが、乳腺炎、尿路感染症は含まれません。
近年、妊産婦管理の向上と抗生物質の進歩により産褥熱は激減しています。

産褥熱の原因菌

大腸菌などのグラム陰性桿菌やバクロイデスなどの嫌気性菌である弱毒菌が主体です。
起炎菌の種類は抗生物質の発達により変化するといえます。

産褥熱の感染経路

子産褥熱の感染経路には、内部感染と外部感染があります。
内部感染には、性器内の弱毒性菌が活動を始める自己感染、膀胱、直腸からの感染、膿瘍や虫垂炎など他に臓器の炎症があり、そことの接触または血行性感染などがあります。
外部感染には、医療従事者の手指や手術操作・器具などの不衛生、褥婦さん自身の手指の不衛生や性交などがあります。

産褥熱発症の誘因

妊娠中の因子…貧血、栄養不良、膣の炎症などの感染症など。
分娩中の因子…前期破水、早期破水、遷延分娩、吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開、産道の裂傷、胎盤や卵膜の一部が子宮内に残っている、胎盤用手剥離、大量出血、頻回の内診など。

産褥熱の病型と症状

産褥熱にはいくつかの病型があります。

悪露停滞

病巣…悪露の排泄がうまくいかず、弱毒菌による細菌感染が起こったもの。
症状…多くは産褥3~4日に38~39℃の発熱。悪路は少量のことが多いが悪臭がある。子宮収縮が悪く子宮は大きくて軟らかい。

産褥潰瘍(外陰炎、膣炎など)

病巣…外陰や膣の創傷に感染が起こり潰瘍が生じたもの。
症状…局所の疼痛、発熱、腫脹など。

子宮内膜炎

病巣…長期にわたる悪露の停滞。子宮内膜の局所の感染。
症状…産褥3~6日に発症し、38~40℃の発熱。頻脈、食欲不振、全身倦怠感、子宮収縮不良、子宮の圧痛、悪露の滞留(腐敗臭、血性、農性)など。

付属器炎(卵管炎、卵巣炎など)

病巣…感染が子宮から卵管あるいはさらに卵巣に広がったもの。
症状…発症は比較的少ない。はじめは産褥子宮内膜炎の状態で始まり、数日後にあらためて下腹痛と新たな発熱、腹膜刺激症状など。

子宮筋層炎

病巣…子宮内膜炎が筋層に及んだもの。
症状…悪寒戦慄を伴う39~40℃以上の高熱。呼吸促迫、細小頻脈、全身状態重篤、下腹部痛、強い圧痛、強度の腹膜刺激症状など。

骨盤結合織炎

病巣…炎症が骨盤内の結合織に波及したもの。
症状…高熱。全身状態悪化。2~3週間で膿瘍を形成し子宮側方に圧痛性の腫瘤として触れる。

骨盤腹膜炎

病巣…子宮内膜炎、子宮筋層炎、付属器炎、骨盤結合識炎などから直接的に、あるいは膿瘍の腹膜内の破綻により起こる。
症状…悪寒戦慄を伴う39~40℃以上の高熱。呼吸促迫。細小頻脈。全身状態重篤。下腹部痛。強い圧痛。強度の腹膜刺激症状など。

血栓性静脈炎

病巣…胎盤剥離部小血管内の血栓に上行感染が起こり、子宮壁静脈から骨盤内静脈に広がり、さらに大腿静脈にも波及する。
症状…産褥7~10日ころに発症することが多い。多くは一側性で、大腿静脈に及ぶと大腿は疼痛が激しく腫大する。

産褥敗血症

病巣…感染巣から持続的に病原菌が血行に移行している状態。
症状…悪寒戦慄を伴わない39~40℃の発熱。全身状態は初期よりきわめて不良。ショックに陥り、またDIC(播種性血管内凝固症候群)を併発すると予後不良となります。

産褥熱の治療

抗生物質の内服または点滴治療が行われます。
一般的には約90%が2~3日後には解熱し、全身状態の改善します。

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