胎児機能不全（胎児ジストレス）

胎児機能不全（胎児ジストレス）とは、胎児が子宮内において呼吸ならびに循環機能が障害された状態で妊娠中、分娩中いずれの場合にもみられます。
＊日本産婦人科学会により「胎児仮死」という用語が「non-reassuring fetal status」に改称され、その和訳として「胎児機能不全」を使用することになりました。
ただ、今のところ「胎児機能不全」という用語に厳密な定義はありません。

胎児機能不全の分類

胎児機能不全は発症の経過により急性と慢性に分類されます。

【急性の胎児機能不全】

分娩時の障害により急激に発症：臍帯の圧迫、臍帯下垂、臍帯脱出、常位胎盤早期剥離など。

【慢性の胎児機能不全】

妊娠中の胎盤機能低下や慢性的な子宮循環不全におる発症：子宮内胎児発育障害、妊娠高血圧症候群、様々な母体合併症（高血圧、腎疾患、糖尿病、膠原病など）。

胎児機能不全の原因

胎児機能不全の原因としては以下のようなものがあげられます。

【臍帯因子】

臍帯脱出、臍帯巻絡、臍帯真結節、臍帯断裂など。

【胎盤因子】

絨毛膜羊膜炎、妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離、前置胎盤、糖尿病合併妊娠、過期妊娠など。

【子宮因子】

過強陣痛、子宮破裂など。

【胎児因子】

染色体異常、多胎妊娠、双胎間輸血症候群、血液型不適合妊娠など。

【母体因子】

母体低酸素症（心疾患、喘息、無呼吸）、母体低血圧（出血、仰外低血圧症候群、麻酔）、子癇、重症貧血など。

胎児機能不全の症状

胎児機能不全の症状としては以下のようなものがあります。

• 胎児心拍の異常。
• 頭位であるのに羊水混濁が出現。
• 産瘤の急激な増大。
• 胎児末梢血のｐHの低下。

胎児機能不全の診断

胎児機能不全は以下のような方法で診断が行われます。

• 羊水混濁などの症状の確認。
• 分娩監視装置の胎児心拍モニタリングによる診断。
• 胎児末梢血による診断。
• 胎児心拍数、超音波断層法とNSTによる診断。
• CST、NSTなどによる診断。
• 胎児ー循環系機能検査（母体尿中エストリオール値、血中HSAP）。

低酸素症とは

胎児機能不全では、胎児は低酸素症に陥っている。
低酸素血症では各臓器に酸素を供給できないため血流再配分とよばれる代償機構が働き、生命維持に重要な臓器への酸素供給を優先する。
しかし、低酸素血症が遅延するまたは重症化すると、血再配分は破綻し、最終的には胎児は死亡してしまう。