顕微受精(ICSI)
顕微受精は、顕微鏡を用いて受精させる方法をいいます。
顕微授精には、卵の透明帯にガラス管で穴をあけ精子の進入を助ける透明帯開孔術(PZD)、囲卵腔に精子を注入する囲卵腔内精子注入法(SUZI) 、細胞質に直接精子を注入する細胞質内精子注入法(ICSI)の3種類があります。
その中で、現在では成功率が高い細胞質内精子注入法(ICSI)が顕微授精の主流になっています。
細胞質内精子注入法には大きく分けて2種類の方法あります。1つは従来から用いられてきたICSI、もう1つはピエゾICSIです。この2つの方法は、卵子側の膜の破り方に大きな違いがあります。
ICSI:イクシー
ICSIは、顕微鏡下で精子と卵子を受精する方法で直径6~8μmの注入用ピペットで精子を吸引し、 その針を卵の細胞の内に刺して精子を卵の細胞質の内に直接注入します。ICSIは針で細胞膜を強引に膜を破ります。
ピエゾICSI
ピエゾICSI は微細な振動によって卵子の膜を破るため、吸引によるショックがなく卵子が死んでしまうのを軽減することができること、正常受精率が高くなることが報告されています。
顕微受精(ICSI)の適応
顕微受精の適応は、それぞれの病院で多少の違いがありますが、一般的には以下のようなものが適応対象となります。
- 重症乏精子症
- 重症精子無力症
- 精子奇形症
- 重症精子減少症、精子無力症、精子奇形症の合併症
- 精巣上体精子や精巣精子にいる精子を用いた受精
- 精子一透明帯/卵細胞膜貫通障害
- 抗精子抗体陽性
- 原因不明受精障害
顕微受精(ICSI)のながれ
- 卵巣刺激:排卵誘発剤(FSH/HMG製剤、クロミッド)を使って卵巣を刺激し、良質な複数の成熟卵胞を育てます。
- 採卵:経腟超音波で卵胞の位置を確認しながら、採卵針を卵胞に刺して卵子を卵胞液ごと採取します。
- 顕微授精:気な精子の中から1個をピペットで吸引し、顕微鏡下で卵子の細胞質内に注入して培養液中で育てます。
- 受精:卵子を培養液に入れ、調整精液を敵下し(媒精)、体外で受精させます。
- 培養:受精卵の培養する。受精卵を初期胚はで培養する方法と胚盤胞まで培養する方法があります。
- 胚移植:分割した卵子を子宮腔に戻します。
- 黄体充填:着床環境を整え、胚の発育、妊娠維持を図る目的でプロゲステロンやhCGを投与し、黄体補充療法を行います。
- 妊娠判定:採卵後2週間で尿検査により妊娠の判定を行います。妊娠反応が陽性の場合には血中hCGの定量を行います。そして1週間後に経腟超音波エコーにより胎嚢の位置や数を確認します。
顕微受精(ICSI)のメリットとデメリット
顕微受精(ICSI)のメリット
- 1匹の精子で受精が可能である。
- 運動していない精子でも可能である。
- 受精率、妊娠率とも通常の体外受精とかわらない結果である。
- 奇形精子でも染色体が正常なら正常受精妊娠が可能である。
- 無精子症でも精巣上体精子、精巣精子の採取が可能なら、ほぼ同様の成績が得られる。
顕微受精(ICSI)の問題点
- 精子を人為的に選択すること。
- 手技を行う際に卵子を傷つけることがある。
- 顕微授精の歴史は浅く、顕微授精で誕生した児に対する長期的な影響が分からない。
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