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卵巣腫瘍と不妊症

卵巣は子宮の左右の両側にそれぞれ1個ずつある長さ2.5~4.0㎝、幅1.0~2.0㎝、重さ4~10gほどの大きさの器官で卵の成熟、排卵の場、生殖系の内分泌機能を担っている器官です。
卵巣腫瘍とは、卵巣にできた腫瘍のことをいい、さまざまな種類があります。

卵巣のさまざまな腫瘍

卵巣腫瘍は、その起源により表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍の3つに大きく分けることができ、さらにそれぞれに良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍に分けることができます。
表層上皮性・間質性腫瘍とは、卵巣の表面をおおう上皮にできる腫瘍。間質性腫瘍とは、卵巣皮質と卵胞の間にある結合組織(卵巣間質)にできる腫瘍のことをいいます。
性索間質性腫瘍とは、卵胞内の顆粒膜、または黄体から発生する腫瘍で、ホルモンを産生します。
胚細胞腫瘍とは、卵胞内に存在する胚細胞(生殖細胞)から発生する腫瘍です。
3群の割合は、表層上皮性・間質性腫瘍が最も多く、卵巣腫瘍の60~70%を占め、性索間質性腫瘍が5~10%、胚細胞腫瘍が15~20%です。

卵巣腫瘍の症状

卵巣腫瘍は、骨盤腔の奥に位置するため、腫瘍が小さく初期の場合は症状に乏しく早期に気付くことがむずかしく、腫瘍が増大とともに腹壁から腫瘤を触知できたり、圧迫症状として下腹部の膨満感や腰痛、頻尿、便秘、リンパ管の圧迫による下肢の浮腫などがみられるようになります。また、腹水による腹部膨満感を訴えたり、ウエストサイズが増大しスカートなどが入らなくなり気付くこともあります。
また、卵巣腫瘍の茎捻転が起こると突然の激しい下腹部痛が出現することがあります。

卵巣腫瘍の検査・診断

何らかの症状があって受診すると、問診、触診、内診、超音波検査が行われます。
問診では、受診の理由、腹部症状の有無、出血や帯下の有無、月経、妊娠歴、既往症、現病歴、卵巣腫瘍の家族歴などが聞かれます。
内診では、卵巣の大きさ、形、癒着の有無、合わせて子宮がん検診がおこなわれることもあります。
超音波検査では、卵巣腫瘍の大きさ、形、卵巣腫瘍内部の性状、リンパ節の腫大の有無などを観察します。さらにMRI検査で組織型、周囲臓器への浸潤の有無、CT検査でリンパ節転移有無、遠隔転移の検索、腫瘍マーカーは、良性・悪性の別、組織型の推定、治療効果や再発のモニタリングに用いられます。上皮性癌ではCA125、粘液性腺癌はCA19-9、CEA、卵黄嚢腫瘍や胎芽性癌などではAFP、絨毛癌ではhCG、ディスジャーミノーマではLDH、クルーケンベルグ腫瘍ではCEAなどが陽性率が高いため、超音波検査などである程度の予測を行い、腫瘍マーカーのいくつかを組み合わせて診断がおこなわれます。
腫瘍が良性か悪性かの診断は、摘出した腫瘍の病理組織検査によって確定診断がおこなわれます。

卵巣腫瘍の治療

卵巣腫瘍の治療は手術療法が基本で、良性、悪性、腫瘍の大きさ、形状、妊娠希望の有無などにより術式が決定されます。
明らかな良性腫瘍の場合は、腹腔鏡下または開腹により卵巣摘出術や付属器摘出術が行われます。妊娠を希望する場合は、腫瘍のみを摘出して正常卵巣部分を残す術式を選択します。
悪性が疑われる場合は、開腹により患側付属器切除術と術中迅速診断がおこなわれ、病理組織検査の結果が陽性の場合は手術終了、悪性の場合は卵巣癌根治術へ移行されます。ただし、妊娠を希望する場合は温存手術の適応も検討されます。
悪性腫瘍の場合は、手術療法に加え手術後に抗がん剤を用いた化学療法がおこなわれます。
術式としては子宮摘出術、両側付属器摘出術、大網切除術、後腹膜リンパ節郭清術が基本ですが妊娠希望の場合は患側の付属器摘出術にとどめる場合もあります。
卵巣悪性腫瘍は抗がん剤の効果の期待が高く、一般的に2~3種類の抗がん剤を併用して周期的に投与する化学療法がおこなわれます。

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