帯下(おりもの)
帯下とは、膣外に流出した分泌物や浸出液のことをいい、「おりもの」や「こしけ」などともいいます。帯下はその量が多いときに自覚するものです。
帯下は、外陰部や腟前庭部にある粘液腺(バルトリン腺、スキーン腺)、汗腺、皮脂腺などから分泌される分泌液、月経周期の排卵期には、卵巣から分泌されるエストロゲンの影響を受けて子宮頸管から分泌される頸管粘液などの量や質が周期的に変化します。
生理的な帯下はほとんどの女性が経験する症状で、成分は剝脱した腟粘膜上皮細胞、白血球、細菌、粘液などで、正常ではpH4.8~5.0の弱酸性で無臭ないし軽度の酸臭を有します。
月経周期と帯下
帯下は、女性ホルモンと密接な関係があり、周期的に性状や量に変化があります。
月経直後~卵胞期(増殖期)の帯下
月経直後は、残った経血が混入し淡褐色、茶色を呈することもありますが、その後はもっとも量が少なくなり、徐々に量は増え、サラリとした状態になります。
排卵期の帯下
排卵日に近づくにつれて、量が増えていき、排卵の時期にはもっとも量が増え、透明な卵白のように粘り気が強くなり、糸を引くようになります。
排卵時に出血がある場合があり、おりものに血液が混じることもあり、においはほとんどありません。
黄体期(分泌期)の帯下
排卵後、徐々に量が少なくなり、透明から白濁したものになり、粘り気が減っていきます。下着につくと黄色っぽく見えることもあります。
月経前の帯下
月経が近づくにつれて、量が少し増えはじめ、白濁していて、下着がクリーム色から黄色い色がつくことがあり、においが少し強くなってきます。
月経の数日前から、粘液に少量の血液が混じることもあります。
帯下の分類
帯下は大きく分けると生理的に増加する場合と病的に増加する場合があります。
生理的帯下
生理的帯下は、排卵期、妊娠中などに増量するものをいい、エストロゲン分泌の上昇によって増量します。
病的帯下
病的帯下には、感染、炎症、腫瘍などが原因で、帯下の性質や量、帯下の色調や周期などが異なり特徴的な帯下の場合もあります。
帯下の性状とその原因による分類
帯下の中には、その原因疾患で特徴的なものがあります。
白色帯下
白色帯下は膣、頚管、子宮の生理的帯下、真菌の増量によりみられます。
カンジダ膣炎では、ヨーグルト状の白色帯下が増加します。
黄色帯下
白血球や細菌の増加、強い場合は膿性となります。
トリコモナス膣炎、萎縮性膣炎、淋菌、子宮内膜炎、膣異物などで黄色帯下がみられます。
赤色帯下(血性帯下)・褐色帯下
帯下に血液が混入することでみられます。
子宮頸がん、子宮体がん、子宮筋腫、子宮頚管ポリープ、子宮膣部びらん、萎縮性膣炎、切迫流産、切迫早産などで血性帯下がみられます。
悪臭を伴う帯下
膣・子宮の細菌感染によりみられます。
膣炎、子宮内膜筋層炎、子宮頸がん、膣内異物などで悪臭をともなう帯下がみられます。
帯下の検査・診断
帯下が気になって受診すると、まず詳しい問診のあと検査がおこなわれます。
問診の内容は、月経周期、妊娠の可能性の有無、帯下の性状、かゆみの有無、臭いの有無などです。
次に、内診により外陰部、膣、子宮頚部の視診、膣鏡診がおこなわれます。
子宮頸管分泌物の性状、臭気を調べ、膣内分泌物を採取し顕微鏡検査、培養検査がおこなわれます。
さらに確定診断のために、クラミジア検査、カンジダ培養検査淋菌検査、淋菌検査、一般細菌培養検査、子宮頚がん細胞診検査、特殊検査としてHPV検査(頚がんのウィルス検査)などがおこなわれます。
帯下の治療
検査で感染症や原因疾患が判明すれば治療がおこなわれます。
とくに原因がみつからなかった場合は、かゆみなどに対する軟膏が処方されます。