妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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消化管機能に影響を与えるホルモンの変動

妊娠によりプロゲステロン、エストロゲン、hCGなどのホルモンの変化が消化管機能に影響を与えます。

消化管機能に影響を与えるホルモン

妊娠により増量する各種ホルモンのうち、とくに消化管機能に影響を与えるものはプロゲステロン、エストロゲン、hCGなどがります。
とくにプロゲステロンによる影響は最も強く、その平滑筋弛緩作用により消化管の蠕動運動が低下し、胃内容の排出遅延、弛緩性便秘などをきたしやすくなります。
また、プロゲステロン、エストロゲンは口腔内の菌叢を変化させ歯周局所における毛細血管拡張、透過性亢進などをきたし歯周疾患を引き起こします。
プロゲステロンはエストロゲンと同様、妊娠経過に伴い著増するため消化器系の症状は妊娠経過とともに増悪することが多く、これらの性ホルモンは肝臓での蛋白合成や脂質合成を亢進させるため、肝機能は妊娠経過に伴い生理的に大きく変動します。
一方、hCGの変動は妊娠初期から増加し、妊娠8週~12週をピークとして以後著減します。
このhCGが増加する時期に一致して起こりますが、妊娠初期の悪心、嘔吐、いわゆる「つわり」です。つわりはほとんどの妊婦が経験しますが、重篤な妊娠悪阻にならなければ多くは妊娠15週~16週ごろまでに自然に治癒します。原因ははっきりしませんが妊娠に対する恐怖、不安、精神的ストレスなどの心因的なものが誘因とされています。
胞状奇胎や絨毛癌患者では、過剰に産生されるhCGにより甲状腺機能が亢進し、強い妊娠悪阻症候群が現れることが従来より知られています。
近年、血中(free)T4、hCGおよびTSH値と妊娠悪阻症状との間に強い相関があることが報告されています。これは、TSH様作用をもつhCGの甲状腺機能亢進効果によると説明されていますが、hCGでも天然hCGより糖鎖やシアル酸をもたないhCGの方がTSH-receptorとより高い結合能を有するため、その作用は一層強く発現します。
このような異常hCGは絨毛性疾患で多く産生されるため、とくに妊娠悪阻が強いのであろう。
以上をまとめると、正常妊婦では妊娠初期、hCGの増加により甲状腺が刺激され、(free)T4が若干増加し、逆にTSHは若干抑制されおり、軽度の甲状腺機能状態にあるといえます。
この時期にちょうどつわりが出現するが、何らかの原因でhCGが著増し、甲状腺機能亢進が高度となると妊娠悪阻が強く出現するものと考えられています。

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