腎盂腎炎合併妊娠
女性はもともと膀胱炎や腎盂腎炎を発症しやすく、妊娠中の腎盂腎炎の発症頻度は全妊婦の約1~2%と多く、とくに妊娠中期に発症し、半数以上が右側のおこります。
腎盂は尿管の最上部に位置する部位で、腎臓でつくられた尿は腎盂に集まり、尿管を通って膀胱に溜められ、その後、尿道を通って排泄されます。
腎盂腎炎とは
腎盂腎炎とは、細菌が膀胱から尿管を逆流し、腎盂に 感染して炎症を起こす病気で急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎に分類されます。
急性腎盂腎炎は、膀胱炎から上行性に感染することが多く、慢性腎盂腎炎は、急性腎盂腎炎を繰り返して起こる場合、急性腎盂腎炎から慢性化する場合があります。
腎盂腎炎の原因
腎盂腎炎の原因を感染経路から以下の3つに分類することができます。
- 上行性感染:細菌が尿道から侵入し、膀胱、尿管に進み、腎臓が細菌感染を炎症をおこすもの。
- リンパ行性感染:膀胱や尿管、腎臓周囲のリンパ腺を介し腎臓が細菌感染を起こし、炎症を起こすもの。
- 血行性感染:体の他のところに細菌感染感染がおこり、その細菌が血液を介して腎臓が細菌感染し、炎症を起こすもの。
腎盂腎炎の症状
腎盂腎炎の症状は、悪寒、戦慄、38度以上の発熱、腰背部痛などが急に起こり、感染しが側の腎臓の部位の肋骨下方を軽く叩くだけで痛みを訴える 肋骨脊椎角部叩打痛を伴います。
症状が進行すると敗血症を引き起こすことがあります。
慢性腎盂腎炎は無症状のことが多く、中には疲労感や微熱、食欲不振などの症状があらわれることもあります。
妊娠中の腎盂腎炎が起こりやすい理由
もともと女性は尿管が短い、尿道口と膣口や肛門が近いなどから膀胱炎や腎盂腎炎を起こしやすいという特徴があります。
さらに妊娠すると妊娠に伴うさまざまな変化により妊娠中は非妊娠時に比べて尿路感染症の頻度が高くなるといわれています。
妊娠中に腎盂腎炎になりやすい理由としては、妊娠し大きくなった子宮が膀胱や尿管などを圧迫し、尿路系が拡張、膀胱尿管逆流現象や妊娠中により増加したホルモンにより尿路系の筋肉が弛緩し、残尿量の増加や膀胱から尿管への逆流や起こりやすくなります。
このように妊娠すると腎盂や尿管の拡張、膀胱の弛緩、膀胱尿管逆流が起こりやすくなり、膀胱炎や腎盂腎 炎などの尿路感染症の誘因となります。
腎盂腎炎の診断
腎盂腎炎の診断は臨床症状と検査結果によりおこなわれます。
腎盂腎炎は悪寒・戦慄を伴う高熱、患側の側腹部痛、肋骨脊椎角部叩打痛、悪心・嘔吐などの症状がみられます。
検査は、尿検査と血液検査がおこなわれます。
尿検査は検尿にて膿尿、細菌尿、血尿を認め、腎実質への感染の波及時には沈渣にて白血球円柱が認められます。
血液検査では好中球を主体とした白血球増加、CRP高値などの炎症反応を認められます。
その他、尿の細菌培養検査、抗菌薬の感受性検査、超音波検査が行われることがあります。
腎盂腎炎の治療
腎盂腎炎の基本的な治療は、抗菌薬の投与、安静、水分補給です。
妊娠中でも安全性の高い薬が投与されます。
一般的には抗菌薬の内服による治療が行われますが、状態によっては入院し、点滴による抗菌薬の投与と補液が行われます。
腎盂腎炎の予防
腎盂腎炎は、再発することがあります。
腎盂腎炎を予防するために日ごろから注意する必要があります。
- 陰部の清潔を保つため入浴、シャワー浴などを行いましょう。
- 夫婦生活の前と後にシャワーを行い清潔に心がけましょう。
- 水分を多めに飲むよう心がけましょう。
- 通気性のよい下着をしましょう。
- おりものシートなどは頻繁に交換しましょう。
- 排尿をがまんしないようにしましょう。
- 十分な睡眠と休息をとりましょう。
- 規則正しい食生活に心がけましょう。
- 症状がみられたら早めに受診しましょう。
- 処方された薬はきちんと服用しましょう。