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ネフローゼ症候群と妊娠

ネフローゼ症候群とは、糸球体性の大量の蛋白尿による低アルブミン血症の結果、浮腫が出現する腎疾患群です。

ネフローゼ症候群の分類

ネフローゼ症候群は原発性糸球体疾患に起因する一次性ネフローゼ症候群と続発性糸球体疾患による二次性ネフローゼ症候群に分類されます。

一次性ネフローゼ症候群

一次性ネフローゼ症候群は腎臓糸球体原発の疾患による場合でネフローゼ症候群の70~80%は特発性にあたります。

二次性ネフローゼ症候群

二次性ネフローゼ症候群は全身性疾患に続発する場合で、原因には、糖尿病性腎症、全身性エリテマトーデス、アミロイド―シスなどが代表的なものです。

ネフローゼ症候群の診断基準

成人ネフローゼ症候群の診断基準(平成22年度厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害に関する調査研究班)は、

  1. 蛋白尿:3.5g/日以上が持続する。(随時尿において尿蛋白/尿クレアチニン比が3.5g/gCr以上の場合もこれに準ずる)
  2. 低アルブミン血症:血清アルブミン値3.0g/dL以下。血清総蛋白量6.0g/dL以下も参考になる。
  3. 浮腫
  4. 脂質異常症(高LDLコレステロール血症)

ネフローゼ症候群の治療効果判定基準

ネフローゼ症候群の治療効果判定基準(平成22年度厚生労働省難治性疾患対策進行性腎障害に関する調査研究班)によると、

  • 完全寛解:尿蛋白<0.3g/日
  • 不完全寛解I型:0.3g/日≦尿蛋白<1.0g/日
  • 不完全寛解II型:1.0g/日≦尿蛋白<3.5g/日
  • 無効:尿蛋白≧3.5g/日

※治療効果の判定は治療開始後1ヶ月、6ヶ月の尿蛋白量定量で行われます。

ネフローゼ症候群の症状

ネフローゼ症候群の特徴的な症状は浮腫です。それ以外にも全身の強い倦怠感、食欲不振、腹や胸、心臓に水がたまるなどがみられます。
また、尿蛋白が増加することにより、排尿時に尿の泡立ちが見られたり、低蛋白血症によって血中の水分や塩分が血管の外へ出てゆくことから体がむくんだりします。
さらに浮腫によって体に水分が溜まるため体重が増加するなどの症状も観察されます。また、高殿ネフローゼ症候群では、腎不全や心筋梗塞、脳梗塞などの疾病を二次的に引き起こすことが知られているため早めの治療が必要です。

ネフローゼ症候群と妊娠

治療効果と腎機能から次の6ランクに区分します。

  1. 完全寛解…治療打ち切り後6ヶ月を経て再発をみない場合は、妊娠・出産は一般に支障はありません。なお6ヶ月以内は原則としてすすめられません。
  2. 不完全寛解③型(蛋白尿1~2g/日程度)…クレアチニンクリアランス(Ccr)が70ml/分以上の場合、治療打ち切り後6ヶ月を経て病態の安定が認められる場合は一般に支障はありません。なお、6ヶ月以上にわたり病態が安定していても治療中の場合には、原則としてすすめられません。
  3. 不完全寛解Ⅰ型(蛋白尿1~2g/日程度)…クレアチニンクリアランス(Ccr)が70~50ml/分の場合は原則としてすすめられません。
  4. 不完全寛解Ⅱ型(蛋白尿2~3.5g/日程度)…クレアチニンクリアランス(Ccr)が70ml/分以上の場合は原則としてすすめられません。
  5. 不完全寛解Ⅱ型(蛋白尿2~3.5g/日程度)…クレアチニンクリアランス(Ccr)が70ml/分未満の場合はすすめられません。
  6. 治療無効(蛋白尿3.5g/日以上)…すすめられません。

なお、拡張期血圧が95㎜Hg以上を持続する場合、あるいは病態が不安定な場合には区分を低いランクとします。
生活活動の制限、労働は最小限とし、睡眠を十分にとり、食後の安静など毎日一定の休養とるよう指導がおこなわれます。
食事は心負荷の軽減のため、不必要な体重増加を避けるよう摂取カロリーに気をつけ、塩分制限を行い、高たんぱく食、貧血予防のために鉄分を多く含む食事を摂取するよう心がけるよう指導がおこなわれます。
風邪や尿路感染症などの感染症に気をつけ、症状があれば早めに医師に報告し、心労作を増すことによる急性心不全の防ぐ必要があります。

ネフローゼ症候群の検査と診断

ネフローゼ症候群を診断するためには、

  • 尿検査:尿量、尿蛋白、血尿など。
  • 血液生化学検査:血清総蛋白や血清アルブミン、血中総コレステロール、血清補体、自己抗体など。
  • 糸球体の顕微鏡検査:腎生検など。
  • 腎機能検査:血清尿素窒素やクレアチニンなど。
  • 血液凝 固検査:フィブリノーゲン、D-ダイマーなど。
  • その他:エコーやCT、MRIなど。

尿検査、血液生化学検査、血液凝固検査などが行われます。

ネフローゼ症候群の治療断

ネフローゼ症候群は入院し、薬物療法、食事療法、安静が基本的な治療法です。

安静

入院し安静をとることでたんぱく尿と浮腫が軽減し、腎臓の働きが安定します。

食事療法

ネフローゼ症候群の食事療法は塩分制限で浮腫がある時は1日3g以下に制限します。
食塩に含まれるナトリウムは、血液濃度を高める働きがあり腎臓への負担を大きくする危険性が高いためです。また、低脂肪食にし、体重1kgあたり35kcalほどの高カロリー食をします。
たんぱく質に関しては以前は高たんぱく食をとるように勧められていましたが、現在は否定的な意見が多くたんぱく質については体重1kgあたり 0.8~1.0gくらいが一般的です。

薬物療法

  • 利尿薬:むくみ(浮腫)の改善に用いられます。
  • 副腎皮質ホルモン薬:ネフローゼ症候群の治療の第一選択薬剤は、副腎皮質ステロイドホルモン(代表はプレドニゾロン)です。
  • 免疫抑制剤:ステロイド抵抗性の症例で使用されます。
  • 血小板薬・抗凝固剤:抗血小板薬は糸球体保護作用を有しており、ネフローゼ症候群に幅広く使用されています。

※治療方法は、症状やその経過により異なます。

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