妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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胎児の肺の成熟と分娩の時期

胎児の肺は、妊娠26週には構造が完成し、妊娠34週ころには肺サーファクタント産生が十分量に達して機能的に成熟します。
肺サーファクタント量が十分に産生され、肺の機能が成熟している場合は、自力で呼吸ができ、胎外生活に適応できますが肺サーファクタントの産生量が少なく、肺の機能が未成熟である場合は、胎児は自力で呼吸することができないため胎外生活には適応できません。
このため、肺サーファクタントの量が十分であるかどうかが分娩の時期の決定に大きく関係します。
基本的には、肺呼吸の開始が期待できる妊娠34週で胎児の肺が成熟するのを待って分娩することが望ましいのですが、胎児の状態が悪い場合は、胎内にとどまるリスクと肺成熟度のバランスをみながら分娩の時期が検討されます。
胎内にとどまることでのリスクが高い場合で、肺が未成熟な場合は人工肺サーファクタント充填がおこなわれます。
胎児の肺成熟度の評価は、肺サーファクタントを測定しておこなわれます。

胎児の呼吸様運動

胎児は胎内で実際のガス交換には関与していない呼吸様の運動をおこなっています。
この胎児の胸郭の動きを呼吸様運動といい、妊婦健康診査時に行われる超音波検査(エコー検査)で観察することができます。
呼吸様運動は、出生後の生活にむけて呼吸筋の準備をととのえ、肺呼吸が円滑におこなえるための準備状態と考えられています。
胎児の呼吸様運動は、妊娠10~16週ごろから観察され、妊娠週数が進むにつれて活発になり、妊娠30週以降では呼吸様運動が出現している時間は1日のうち10~50%とされています。
この運動により羊水が肺の内外を循環し、肺の発育が促されます。

肺サーファクタントとは

肺サーファクタントとは、肺胞の細胞から産生・分泌される表面活性物質のことです。
肺サーファクタントは、主にリン脂質からなり、肺胞内側の表面を覆い、肺胞中の水分の表面張力(縮もうとする力)を減少させ、呼吸サイクルの間肺胞が拡張した状態を保てるようにします。

肺サーファクタントの役割

肺サーファクタントの役割は、出生直後から吸気の開始とともに空気を肺胞に取り込む際に胸腔内の生理的範囲での陰圧で肺の表面張力を低下させ、肺胞の虚脱を防ぐことです。
肺サーファクタントは妊娠20週ころから肺胞内のⅡ型肺胞上皮細胞で産生され、気管支および気管内を満たす肺胞液中に分泌され、妊娠30週ころから胎児の呼吸様運動などにより羊水中に急激に増加します。
肺サーファクタントが十分に分泌されると出生後に肺胞がスムーズに拡張・収縮し、肺呼吸が可能となります。
すなわち、胎児の肺の成熟は、肺の構造が完成し、肺サーファクタント産生が十分量に達して機能的に成熟することを意味します。

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