妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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妊娠に伴う免疫系の変化

免疫とは、体の中に侵入してきた異物(細菌やウイルスなど)を排除し、体を健康な状態に保つ(恒常性を維持する)はたらきをいい、生命の維持にとってのきわめて重要な働きです。
妊娠すると免疫系は大きく変化します。

妊娠と免疫の関わり

妊娠は新しい生命である胎児が母親の体内で成長し、この世に生を受けるという”種の保存”にとってきわめて重要な現象ですが、免疫的にみると不思議な現象だといえます。
胎児は母親にとって一種の”同種移植片”とみなすことができ、免疫的な拒絶反応が生じても不思議ではないのですが、多くの場合そのような反応は起こらず妊娠は継続します。
妊娠免疫に関する研究のなかで、最初の大きな成果は血液型不適合妊娠の克服です。
最近では、流産や死産を繰り返すいわゆる不育症を克服するため、免疫の知識が役立っています。

胎児を守る母親の抗体がときに障害を起こすことがあります

免疫を担う重要な物質としては免疫グロブリンがあります。
免疫グロブリンは抗体と呼ばれ、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDの5種類がります。
胎児には抗体を産生する能力がなく、5種類の免疫グロブリンのうち、IgGが胎盤を通過し、胎児に以降し胎児を守る役割を果たします。
一方、母体血中に胎児成分が流入した場合、その胎児成分が母体に存在しない物質である場合、これが抗原となり、これに対する抗体を母体が産生してしまいます。
ここで問題となるのが血液型不適合妊娠で、とくにRh不適合妊娠が問題となります。
血液型、すなわち赤血球の抗原型はABO血液型をはじめ400種類以上が知られていますが、とくに抗原性の強い血液型がRh式血液型です。
Rh式血液型には、Dとd、Cとc、Eとeの3種類の型抗原を規定する遺伝子があることが明らかになりましたが、もっとも重要な抗原型はRh(D)抗原です。
Rh(D)抗原陰性女性が妊娠した場合、胎児のほとんどはRh(D)陽性であり、初回分娩時に児のもつRh(D)陽性血が母体に流入し、母体が抗Rh(D)抗体を産生する可能性があります。
抗Rh(D)抗体が産生された場合、次回妊娠において胎児に移行し、胎児溶血性貧血、新生児重症黄疸など重篤な病状が認められることがあります。
これを予防するために、分娩後72時間以内に抗ヒトRh(D)抗体を投与することが行われています。これは、抗ヒトRh(D)抗体により母体内に流入したRh(D)抗原を中和し、Rh(D)抗原に対する抗体が産生されることを防ぐという治療です。これによりRh(D)不適合による感作例はきわめて少なくなっています。

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