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HTLV-1検査

HTLV-1とは、ATL(成人T細胞白血病)やHAM(HTLV-1関連脊髄症)、HTLV-1ぶどう膜炎(HU)などを引き起こすウイルスです。
HTLV-1の感染経路は、母子感染、性交渉による感染および輸血の3つが主なものです。献血者の抗体スクリーニングにより輸血感染はほぼ完全に阻止されました。母子感染は多くが母乳を介した感染と考えられ、母子感染予防の取り組みが行われています。

ATLとは

ATLとは、成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia)の略で、白血病・リンパ腫の一種で九州・沖縄地方に多い病気です。
HTLV-1キャリアが生涯においてATLを発症する危険性は5%程度と考えられていて、日本での発症年齢の中央値は67歳です。
がん剤による治療に抵抗性で予後不良です。

HTLV-1と妊娠

輸血による感染がほとんどなくなった現在、子どもへの感染は主として母乳によるものです。
キャリアの母親が母乳栄養をすると感染がおこります。
母乳の中にHTLV-1に感染した細胞が含まれているためで、生後4ヵ月以上母乳を飲ませ続けた場合、赤ちゃんの5人に1人が感染することが知られています。感染を防ぐ方法としては、人工栄養(粉ミルク)への切り替えなどの方法があり、この母子感染の危険性を30~40人に1人の確率に下げることができます。
ただし、母乳を全く与えず、人工乳のみで哺育しても約3%の感染率は認められています。

妊婦健診でのHTLV-1検査の目的

厚生労働省は、平成23年度からHTLV-1抗体検査を妊婦健康診査の標準的検査項目に追加すると決定しました。
成人T細胞白血病(ATL)を予防するためには「母子感染によるキャリアを作らない」ことが大切であるという見地からHTLV-1スクリーニングをおこなわれます。
HTLV-1スクリーニング(血中HTLV-1抗体測定)を妊娠初期から妊娠30週頃までにPA法もしくはEIA法(CLEIA法)で行ないます。

HTLV-1二次スクリーニング

妊婦のHTLV-1抗体スクリーニング検査は、妊娠初期~中期(30週あたりまで)に実施。
抗体スクリーニング検査には、PA法やCLEIA法あるいはCLIA法がある。いずれのスクリーニング検査法にも偽陽性があることから、スクリーニング検査が陽性であることのみで、キャリアであると判定されず陽性の場合には必ずウエスタンブロット(WB)法による確認検査が必要となります。スクリーニング検査が陰性の場合には、妊婦は感染していません。

HTLV-1キャリアであると判定

WB法あるいはPCR法が陽性であれば、HTLV-1キャリアであった場合医師より以下の内容の説明が慎重におこなわれます。

  1. おもな感染経路は母乳による母子感染と性行為感染です。
  2. 3ヵ月を越える母乳栄養をした場合の母子感染率は約18%、完全人工栄養であっても母乳以外の感染経路で約3%が母子感染を起こります。
  3. 日本ではHTLV-1 キャリアが100万人を越えている。
  4. キャリアは西日本が多く、最近では大都市圏にも拡がっている。
  5. HTLV-1感染による代表的な疾患には、成人T細胞白血病(ATL)、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、ぶどう膜炎(HU)があります。
  6. 生涯発症率はATLが全キャリアの約5%、HAMが0.3%です。

母子感染予防のための乳汁選択

  1. 経母乳感染を完全に予防するためには母乳を遮断する必要があり、原則として完全人工栄養が勧められています。
  2. 母乳による感染のリスクを十分に説明を受けてもなお母乳を与えることを望む場合には、短期母乳栄養(生後90日未満)や凍結母乳栄養という選択肢もありますが母子感染予防効果は確立されていません。
  3. 完全人工栄養であっても約3%に母子感染が起こります。
  4. 短期母乳栄養を選択しても、ときに授乳が中止できず母乳栄養期間が長期化する可能性があります。
  5. 経管栄養を必要とする早産低出生体重児に対しては、壊死性腸炎や感染症のリスクを考慮し、成熟した哺乳機能が確立するまで凍結母乳栄養を行ったほうががよいことがあります。
  6. 乳汁栄養法の選択は分娩前に決定しきましょう。希望が変わった場合には医師に伝えましょう。
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