妊娠・出産・新生児*Dear Mom*
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新生児の黄疸

黄疸とは、血液中のビリルビンという物質が増えることにより、皮膚や眼球結膜が黄色く染まってみえることをいいます。
胎児の時期は、ビリルビンの代謝は胎盤を介して、母親の肝臓において行われていたものが出生と同時に自分自身の肝臓で行わなくてはなりません。しかし、生後しばらくは新生児のビリルビン代謝経路は未熟な状態にあるためほとんどの新生児には黄疸が発現します。

病的黄疸の原因

病的黄疸の原因としては以下のようなものがあげられます。

  1. 溶血性疾患:血液型不適合、赤血球形態異常など。
  2. 血管外の多量の血液貯留:頭血腫、帽状腱膜下血腫など。
  3. 消化管からのビリルビンの吸収亢進:消化管の機械的閉塞、蠕動の減少など。
  4. 肝臓におけるビリルビン処理の減少:肝臓・胆嚢の疾患(先天性胆道閉鎖や拡張症など)における肝臓でのビリルビンの取り込み減少や排泄障害、グルクロン酸抱合の低下。

新生児溶血性黄疸

新生児溶血性黄疸は、血液型不適合や赤血球形態異常などが原因で血中の赤血球が壊され、ビリルビンが上昇することで起こります。
母体間のABO式血液型不適合(母親がO型で子どもがA型もしくはB型)およびRh式血液型不適合(母親がRh陰性で子どもがRh陽性)が代表的です。
母親と胎児の血液が違う場合、胎児の血液が母親に血液に入ると母親の体に抗体ができます。この抗体が胎盤より胎児にの血液に入ると、赤血球が破壊され、ビリルビンが生じて新生児溶血性貧血になります。生理的な黄疸とは異なり、出生直後から強い黄疸が起こり、核黄疸を引き起こすこともあります。
ABO式血液型不適合は全出生の約2%に認められますが、ABO式血液型不適合溶血性黄疸の発症頻度は3000人に1人です。Rh式血液型不適合は、ABO式血液型不適合に比べて重症化することが多く、臨床的に重要です。

核黄疸

新生児において高度の高間接ビリルビン血症の持続により、血管脳肝門を通過したビリルビンが脳に蓄積して生じる病気です。
急性期の臨床症状として、

  1. Ⅰ期(生後数日)には筋緊張低下、嗜眠、哺乳力減弱をきたします。
  2. Ⅱ期(生後数日~1週間)には筋緊張亢進、後弓反張、発熱、甲高い泣き声、痙攣などを呈します。
  3. Ⅲ期(生後1~2 週間以降)には筋緊張亢進は減弱ないし消退します。

更に慢性期(生後1~1 年半)の臨床症状としてアテトーゼ、上方凝視麻痺、難聴などの核黄疸後遺症が出現します。
治療が遅れると中枢神経症状を示し後遺症を残すこともありますが、近年では、治療技術の進歩により減少傾向にあります。

黄疸の診断基準

一般に新生児の黄疸は経皮ビリルビン濃度測定法を用いてスクリーニング検査が行われ、スクリーニング陽性であれば、採血を行い血清ビリルビン値を測定します。
その結果

  1. 早発黄疸:生後24時間以内に出現する顕性黄疸(総ビリルビン濃度5~7㎎/dl 以上)
  2. 血清ビリルビン値の急速な上昇(5㎎/dl/日)
  3. 高ビリルビン血症(成熟児15㎎/dl 以上、未熟児12㎎/mg/dl 以上)
  4. 直接ビリルビン値上昇(2㎎/mg/dl 以上)
  5. 遷延性黄疸(成熟児生後1週間以上、未熟児生後2週間以上)

黄疸の治療

黄疸の治療としては光線療法や交換輸血などが行われます。

光線療法

光化学反応により、ビリルビンを生体に排泄する治療法です。
ビリルビンは、光を当てると水溶性に変化し、尿や胆汁に排泄されやすくなるという特性があり、光照射により、皮下脂肪組織中のビリルビンを水溶性の毒性のない物質に変化させ、尿中、便中に排泄させるというもので、高ビリルビン血症の早期治療として用いられています。
照射の方法より蛍光灯、LEDおよびspot lightで赤ちゃんの上から照射する方法、赤ちゃんを包んで背部より照射するfiber optic light、赤ちゃんを光透過性の服を着せて背部から照射するベッド型があります。
副作用として有名なものに、赤ちゃんの皮膚色がブロンズ色になり、血清・尿が一過性に褐色調を示すbronze baby syndromeがあります。
光線から目を保護するために、赤ちゃんにはアイマスクが用いられ、できるだけ多く照射するためおむつのみとなります。

交換輸血

高非抱合ビリルビン血症による核黄疸の発症するような危機的状態を回避するための最も効率の良い方法であす。
交換輸血は、重度の高ビリルビン血症で適応となる。少量の血液を採取し、部分的に溶血して抗体で覆われた赤血球を取り除き、供血者の抗体で覆われていない赤血球と交換して臍静脈カテーテルを通して補充するもの。
核黄疸の原因となるのは非抱合型高ビリルビン血症だけであり、抱合型ビリルビンが有意に上昇したとしても、交換輸血が必要かどうかの決定には総ビリルビン値ではなく非抱合型ビリルビン値を使用する。しかし、ウイルス感染症を含む感染のリスクおよびGVHD(graft versus host disease)のリスクを常に持っている。

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